2020年9月13日日曜日

私のライフワーク

              府中地区保護司  石塚 百合子

 保護司を拝命し2年が過ぎました。保育者である私は、幼少期の環境が人の育ちに大きく影響を与える、と考えています。

担当している保護観察対象者のTは30代。地域社会の在り方が変化し、自然環境と引き換えに近代化が急激に進んだ時期に育ち、家庭崩壊も同時に経験しました。彼も厳しい少年期を過ごしたことが想像できます。半世紀前、多摩地区には原っぱや小川など、子どもが遊ぶ空間が至る所にあり、身体能力を高め人間関係も育むなど人間形成の土台を作る大切な場所でした。私もアニメ「となりのトトロ」の舞台のような里山を駆け回って育ちました。中でも小川や草むらでは必ず小さな生き物や植物に出会え、五感を伴った心躍る体験は数十年たった今でも決して色あせることはありません。たとえ家庭で嫌なことがあって息が詰まった時も、原っぱなどで仲間と過ごしたり、雑木林や小川で虫や生き物を捕まえていると次第に心が晴れてきたことを思い出します。現在の多摩地区には、そのような空間は「公園」以外、ほとんど消えてしまいました。ただ公園も、必ずしも子ども達のためのものではありません。現代の子どもたちは、どこで心弾む経験を積んでいるのでしょうか。

私は幼稚園に通ったことはありませんでしたが、幸せだった子ども時代の宝物のような体験を園児達にも味わってほしいと、幼稚園で生き物の飼育や虫探し、木登り、泥遊び、栽培、お花摘み等、土や水を伴って体と心を十分駆使した遊び(時には火を使うことも)をしてもらいたいと環境を見直して数十年がたちました。さらに保護者も巻き込んで、子ども・保護者・職員共に「育ちあう」日々を送っています。Tにも、社会復帰のため努力の日々に寄り添いつつ、逆境にあっても健全に育ち自立する力を保つために、動植物とかかわり心癒す命の存在に触れてもらいたいと願っています。  


育ちあう日々

               

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