2021年10月4日月曜日

内側から相手を知る

                      北多摩北地区西東京分区 星出卓也

保護司となって沢山の方から助言やアドバイスを頂いたが、カウンセラーの中村泰章先生から学んだことは計り知れないほど大きく、今も私の保護司としての歩みを支えています。更生保護協会が主催する学習会などで中村先生が伝えたことは、相手を援ける援助とは、援助者が一方的な助言を与えることではなく、本人が自分の意思で立ち直ろうとすることを援けること。人に非行からの立ち直りという行動の転機を与える鍵となるものは、決して親や教師や保護司といった他人からの助言ではなく、本人自身の立ち直ろうとする意思にある、ということでした。そのような相手の心に改善や転機が生まれることを援けるような援助こそが保護司には求められているということでした。

中村先生は「保護司が相手を知る方法は外側からではなく、内側からである」と語っていました。「外側から相手を知る」とは、医師が患者に対するように、本人の問題点を客観的に観察し、いわば診断的に相手を外側から分析して助言を与えるという方法です。しかし人が求めていることは客観的な事例であるかのように観察されることではなく、一人の人間として接してもらうことです。それに対し「内側から相手を知る」ということは、相手の心の動きに沿って相手の気持ちに共感し理解するという方法です。そうした自分の気持ちを理解しようとする人の存在によって、人は始めて自分自身の心を見つめ始めるということでした。

私自身の生涯を振り返っても、親や他人から受けるアドバイスがどれほど正しいものであっても、私が「本当にそうだ」と思わないかぎり私を動かす言葉とはなりえませんでした。しかし自分が色々な挫折を通して「俺は一体何をやっているのだろう・・・」と自分自身が痛感し、受け止めたことは、もはや他人の言葉ではなく自分の言葉でした。そんな自分の気づきを生み出してくれるものは、自分に関心をもって共感する人の存在でした。

今でもついうっかり、余計な助言を人に押し付けては空回りする連続ですが、その度に、本人の意思しか本人を変えられないことを心に刻んで、面接の原点に立ち戻らせていただいています。

コロナ禍の中での面接

            八王子保護司会  山田 雅彦

 令和3年度の各地区保護司会の活動も、昨年度と同様に大きな制限がかかって始まりました。手足をもがれた感じもする諸活動ですが、特に大切な「対象者との面接」も、相手が見えない「電話」で、対象者の心情を推し量るしかありません。しかし、この電話対応だけしていては、用を足すのは問題ありませんが、対象者の心には届かないので(普段の電話での応対でそう感じてはおられませんか?)、実際には対象者になるべく会って面接を実施しています。その顔、声からは、電話に倍する真実と情報が得られます。対象者もそのほうが安心する感じがしてなりません。先日も手術して間もない対象者と面接をしました。対象者個人の生活にも大きな制限がかかっている毎日、その対象者は息せき切ったように話題を「爆発」させました。2週間にあったすべてのこと、そして逮捕された経緯や少年時代からの思い出話、また刑務所の中での経験も話します。中には、今後の面接や再犯防止に使える情報も、たくさんあります。あちらが心を開く、こちらも心を開いて訊く、これは「電話」では不可能と思いました。今後も細心の注意を払いながら、直接面接を行いたいと思っています。