八王子地区保護司 山田雅彦
八王子市には現在8箇所の「子ども食堂」があります。それぞれが独自の形態を持っていますが、私が関わる「ほっこり食堂」は、市内でもちょうど真ん中あたりの元本郷町に位置しています。ここで子ども達、そのご家族と関わるようになって1年半が経ちます。私はいい年なので(笑)、男手ひとりでも誰からも警戒されず、もちろん子ども達には唯一の男性ということで、「アイドルじいじ」などと言われて喜ばれて(?)おります。
さて、どんな風に「ほっこり食堂」でのひと時が送られるかお話いたしましょう。
午後4時前には食堂に(個人の篤志家がお貸し下さった全くの一軒家です)到着します。もう主任児童委員の女性達が50人分のおかずを作っています。いつも4品ありますが、2品は手がかかるものです。私のすることは近郊農家で余った野菜を寄せて下さる方がいらっしゃるので、その野菜を小袋に分けて欲しい方々にお分けする準備をします。すると、一番早い中学生が学校からの帰りに寄って勉強をします。横に座って「これは?」と訊ねられる度に答えます。最近この中学生は部活に入って6時半頃にやってきて、塾の勉強をしてから食事をして小さな子と遊んでくれます。
5時半になると、母子3人連れがやってきます。こちらも宿題を済ませます。もちろん横に座ってベタ褒めに(笑)しながら進めます。兄も弟もおとなしく真面目なので楽です。合間にお母さんと話します。やはり子育てや勉強のことが主題です。
続いて母子の二人組。うかがうとシングルマザーです。娘は1年生、快活なお子さんですが、支援学級に在籍しているそうです。この子は絵を描くのが大好きで相手をします。時々「おじいちゃん!」とやさしく言ってくれるので可愛くて仕方ありません。しばらくするとお母さんに急かされて食事に移りますが、最初はあまり食べなかったのですが最近はよく食べるようになり嬉しい限りです。先刻の二人の兄弟はお替りして食欲旺盛です。食後に「オセロ」の挑戦が待っているからです。
食堂には初めての子ども達が現れると、紙芝居をしたり、絵本を読んであげたりします。あぐらの上に乗っかって一生懸命に聞いてくれます。それはそれは気持ちがいいですよ。私には存在感を一番感じるひと時です。
一息ついていると、ベビーギャング(笑)が3組やってきます。子どもは合計6人です。上が1年生、他は保育園の子ども、「おっ、いるいる!」と玄関から上がってくるといきなり一人が背中にパーンチ!弟はキーック!もちろん反撃はします(笑)。まあ、プロレスごっこみたいな遊びが始まります。まあ、食事が本格的に始まるまでの20分ほどはかかりっきりになります。結構な肉体労働ですが、これも子ども大好きな私ですから喜んでやっています。周囲からはあきれられています。狭い住宅なので、走り回ると怒られてしまいます。私も彼らも楽しいから懲りずに続けていますが、やはり子どもたちは本気になるので、ケガをさせないように気を遣います。
このギャング達が食事に落ち着くと将棋やオセロが始まります。なかなか真剣!なんとか私を負かそうとして懸命です。負けてやりたいと思いながらつい勝ってしまうことが多くて、やはり人間ができていないと思うこの頃ではあります。この間別室では何組もの大人が見えて、食事を摂ります。中には、おかずが少ないだの、盛りが悪いなどケチをつける大人もいます。こういう人がむしろ毎回来ているのは不思議です。耳をそばだてていると他人の悪口や金のことなど、どうも性格はイマイチ・イマニです。
ギャング達は食事を済ませると第2ラウンドを挑んできます。あしらいながら、絵を描いたり、声をかけていない子ども達全員に声をかけます。もちろん笑顔を精一杯振りまいてますよ。この食堂に来る子ども達が皆楽しくなり幸せな気持ちで自宅に帰ってもらえるように!
しかし、この食堂の存在価値を考えると、この時間在宅して一人でカップラーメンやコンビニ弁当を食べている子ども達の顔が浮かびます。何とかしてそういう子ども達を食堂に招き入れることはできないものかと・・・・これが最大の願いになっています。
時間は瞬く間に過ぎて8時になります。帰る時間です。毎回フードバンクなどからいただいたお土産もあります。子ども達は親が急かさない限りはいつまでもいたいのですが(笑)、仕方なく送り出します。最後まで遊びふざけていた子も親に怒られながら、バイバイと手を振り、道路の向こうの闇に消えていきます。いつもその時はちょっとセンチな気分になります。
8時になるとやっとスタッフの時間です。いつも8人から10人くらいです。時々ボランティア、大学生もやってきますが、案外その方々は一定しません。私たちは、その日にあった出来事を振り返りながら全員で反省も加えて食事をともにします。9時近くになると食事も終わり片付けが始まります。私は一足早く帰途に付きますが、私の最大の土産は、「子ども達の笑顔」です。あの越後の良寛さんになれたら、それが私の今の純粋な願いです。