府中地区保護司会 小澤 秀敏
中学3年生だった昭和41年7月、下校時に我々クラス仲間4人が校門の近くを通るとリヤカーで砂利を運んでいる人が目に留まった。よく見ると、4月に着任した校長先生ではないか。今まで一度も話をしたこともなかった先生だったが、誰からともなく先生の作業を手伝い始めた。心地よい疲労感の後、帰りがけに校長先生が口にしたのは、「君達、夏休みに山に行かないか?」という信じられない言葉だった。そして皆で相談し、親にも許可をもらった上で、連れて行って頂くことにした。学校の図書館で調べた結果、長野県の美ヶ原高原を候補として先生に相談、行き先は「美ヶ原」となった。
8月中旬、新宿駅から中央本線の夜行列車に乗り、早朝松本駅で下車、路線バスに乗って美ヶ原高原へ。記憶は定かではないが昔ながらのボンネツトバスだったと思う。そのバスはともかく、女性の車掌さんが素晴らしくて、優しさに溢れた接客態度に心が温かくなった。バスは停留所を外れたところで手を挙げた人を乗せたりして、ゆっくり山道を登って行った。車掌さんの振る舞いを見て感動したのは私だけでなく、4人の少年全員だったことが後でわかった。