北多摩北地区保護司会
東村山分区 小松
健二
定年退職後にボランティア活動の一つとして与えられたのが保護司であった。あっと言う間に十数年が経ち、最近は体力の衰えを感じることが多くなってきた。こんな時こそ、やり残したことが頭のどこからか浮かび上がってくるもので、残された体力をふりしぼって断捨離ならぬ終活を始めることとした。
真っ先にやりたかったのが登山、いや登山は手段で目指すは高山でなければ見られない石南花(シャクナゲ)の花を観ることである。学生時代にしばしば登った八ヶ岳の編笠山(標高2524m)、その山腹に可憐に咲きいつも心を癒してくれた忘れられない花に、もう一度会いたかったのである。最初は独りで行くつもりだったが、しかし会いたい気持ちはやまやまでも長い間、高い山には登っていなかったので次第に不安が募る。そこで山好きの友人を誘い二人で登ることとなった。当日は晴天に恵まれ、麓をスタートしたときの足取りは軽く二人で歩調を合わせながらの山登りは順調であった。休憩を挟みながら2時間ほど進むと辺りはすっかり高山らしくなり、その頃から足取りは重くなり一歩一歩踏み締めるような歩調に変わっていた。更に歩を進めて、この辺りかなと休憩をしながら周りを見渡したとき木々の間に石南花を発見。遂に昔と変わらぬ期待通りの憧れの花と再会することができたのである。しかし話はここで終わらない。花に会えた後はすぐに下山するはずだったが急遽、編笠山の頂上まで逆に登ろうと言うことになったのである。登山でスケジュールを変更することは危険なこと、好ましくないこととは承知していた。にもかかわらず、敢行したのには理由があった。天候が良かった、何度も登っている山であった。それでもリスクはある筈なのに。敢行を決定づけた最大の理由は、独りではなく、ふたりであったこと。独りだったら不安だらけ、でも二人だったら安心感で勇気倍増ということになる。
保護観察対象者も同じことを感じながら日々生活しているのではないだろうか。対象者に寄り添い、真に求められる処遇とは何なのか、を自問しなが更生保護に活かしたい。