我慢・辛抱・おもいやり!
西多摩地区保護司会青梅分区
保護司 前園 務
委員会を去ったあと、自宅に地域の保護司会長と知り合いの女性保護司が来られ保護司就任手続きのための書類を置いて行かれた。 浅学非才の者ですが法務・検察に身を置いていた者としての責任を果たすべく、また地域の安全・安心な社会を願う者の一人としてお引き受けすることとなった。
併せて、刑事司法の車の両輪である応報刑の役目のみに目が向き、社会の寛容によって社会で更生するチャンスを与える、いわゆる教育刑の役目を担っている更生保護に無関心であった余りにも無知の自分に反省させられた。
委員会在職中に、少年院からの仮退院や刑務所から仮出所する者の家族の引受意思等を調査した保護司作成の書類(生活環境調整書)を見て~保護司の仕事は大変だ。 自分にはとても務まらない~ などと思っていたが、いつの間にか保護司6年目(現在保護観察対象者3名担当)を迎えることになった。
核家族化や地域社会の人間関係の希薄化が一層進み、保護観察対象者を取り巻く生活基盤や支援体制はますます脆弱になりつつあり、対象者の自立には自身の自覚・努力とともに、以前にもまして家庭・交友関係・住居・就労・就学等様々な条件や環境の整備が必要だと思われる。 これまで、西多摩地域は比較的治安も良かったし、また重大事件も少なくなかったが、近年ここ西多摩も例外ではなくなって来ている。
対象者との関わりで、世の中はむやみに敵対すれば牙をむくが、周囲への感謝は逆に大きな助けをくれる。 機会ある毎に「我慢・辛抱・思いやり」の大切さを説いてきたが、「約束を守らない。平気で嘘をつく」等のまた騙されたの連続で、よくよく考えると、この言葉は自分のことと感じるようになった。 とは言うものの、保護司は対象者の人生の一部に関わる仕事で、対象者と共に,自分も成長出来る究極の贅沢な仕事だと思う。 しかも人間の魂に触れる仕事で、また自分の生き様を検証出来る良い場でもあると思われる。
昨今の新聞報道では、「高齢化が進み,保護司の担い手が不足している」などの報道がなされ、また法務省は,「このまま減り続ければ再犯防止の役割を果たせなくなる」などと危機感を強めているが、平成24年度の犯罪白書によれば、保護司として活動実績を重ねて行くにつれて、「社会の役に立っているという充実感」や「対象者の更生に役立っているという充実感がある」と答える保護司の割合は増えている。 これなどは対象者が保護司やその家族との触れ合いの中で心を開き、人間的にも成長していくことに喜びと生き甲斐を感じていることの現れではないかと思われるし、人間同士の見えない絆の実感・確認と言えるかも知れない。 できるだけ多くの人に、この保護司としての「冥利」を体験してもらいたいものだと思う。 また、保護司の職域は自治会や農業関係者・お寺の僧侶・会社経営者・福祉事業関係者・教育関係者等多岐にわたり、いわばその道の人生の達人である。 そのような仲間との交流は一般社会では味わえない領域であり、人間的な魅力・幅を築くのに最高の場でもある。
今は保護司になって、妻も「更生保護女性会」の会員となり協力してくれるなど、亀裂の入った夫婦関係も修復でき、今後は家庭に社会に知力・気力・体力の続く限りささやかな恩返しをし、楽しき農夫仲間と畑を耕し、併せて更生保護を耕し続けて行きたいとの思いである。